隠された贅
自社製の手巻きキャリバー3090をベースとした自動巻きキャリバー3120を搭載したロイヤル オーク オフショア ダイバーには、たったひとつだけ残念な点がある。ムーブメントが見えないことである。ムーブメントをひと目でも見たいのなら、長期間保証された防水性や、軟鉄製インナーケースで確保された耐磁性を犠牲にして、ケースバックを留める8本のネジを外す必要がある。ケースバックのネジは、ネジ山がベゼルのビスと連結している。オーデマ ピゲが、ベゼルの上にあるビスの溝を、すべて文字盤の中心に対して同じ角度になるようにセットできるのはそのためだ。
ケースバックを外すと、278点もの部品で構成された、オーデマ ピゲ自社製ムーブメントにおける珠玉の逸品を堪能することができる。その考え抜かれた構造は、望むべき点がこれ以上、見つからないほど素晴らしい。腕の動きは、ボールベアリングで支持された両方向巻き上げ式のローターによって巻き上げエネルギーに変換され、香箱に伝えられる。香箱内の主ゼンマイによって確保されるパワーリザーブは約60時間と、平均を大きく上回っている。数日間、時計が停止した状態が続き、手で巻き上げなければならない場合は、賢い設計の巻き上げ機構によって抵抗が緩和され、過度な摩耗や損傷が発生しないように解除機構が装備され、守られている。調速機には、自由振動ヒゲと8個の調整錘を使ったエレガントな機構が採用されている。8個の調整錘のうち、6個は歩度を進めたり、遅らせたりするために、残りの2個は微調整のために使用される。テンプは、片持ちのテンプ受けではなく、両側からブリッジで支持されているので、衝撃に対しても極めて高い耐性を示す。
ムーブメントの装飾は数知れない。その大部分が手作業で行われており、ブリッジや地板だけでなく、ルビーの受け石やネジのための窪みにも面取りとポリッシュが施されている。また、ネジ頭やネジの溝にもポリッシュがかけられており、コート・ド・ジュネーブやサンブラッシュ仕上げ、また大小さまざまのペルラージュ模様も見ることができる。ハイライトはやはり、22Kローズゴールドでできたローターで、ブランド名とブランドロゴだけでなく、オーデマ家とピゲ家の家紋も刻印されている。