【82点】ゼニス/キャプテン グランデイト ムーンフェイズ

2011.07.29

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エリート691は自動巻き機構とふたつの付加機能を搭載した高性能ムーブメント。
丁寧な装飾が施された自社製キャリバーは、両方向巻き上げ式ローター、同じ高さに配置された2枚のディスクによるビッグデイト表示、そして、ムーンフェイズを装備している。

月の魅力

キャプテン グランデイト ムーンフェイズの第2の付加機能であるムーンフェイズ表示は、誰にとってもビッグデイト表示と同等の明確な利用価値があるわけではない。ムーンフェイズ表示はどちらかと言えば、地球の衛星、月の持つ天文学的あるいは占星学的な魅力によって、ユーザーのインスピレーションをかき立てる機構である。月そのものや、太陽と地球との位置関係によって満ち欠けする姿は、人類が天体観測を始めて以来、私たちを魅了してやまない。だからこそ、現在の月の満ち欠けをひと目で知りたいと思う時計愛好家がいても不思議ではない。とは言うものの、大多数のユーザーは、ムーンフェイズ表示をどちらかと言えば造形的な要素として見ているのではないだろうか。ヴィンテージ、現行品を問わず、これまでに生み出されてきた無数のムーンフェイズウォッチと同様に、テストウォッチでも、青いムーンフェイズ表示ディスクを備えたインダイアルがクラシカルな意匠を文字盤にもたらしていることは確かである。

新作キャプテンのムーンフェイズ表示には、ムーンフェイズ特有のアーチを持つカバープレートが装備されている。カバープレートに施された放射状のギョーシェ模様は、スモールセコンドにも見いだすことができる。カバープレートの後ろでは、伝統に則って、ふたつの月といくつかの星が描かれた青いムーンフェイズ表示ディスクが回転している。カバープレートのアーチの後ろからは、まず満ちていく月が現れ、満月を過ぎると次第に欠けていく。ひとつの朔望周期が終わると地球の衛星は見えなくなり、新月となる。

ゼニスは伝統的なムーンフェイズ表示を採用している。122・5年後になって初めて1日の誤差が生じる高精度のムーンフェイズとは異なり、このモデルに搭載されているムーンフェイズは約2・7年後に1日分、進ませる必要がある。だが、たとえ熱心なムーンフェイズファンであっても、この精度で十分満足できるだろう。特に、ムーンフェイズの精度は、時計を休みなく動かし続けた場合を前提とした理論値なのだから、なおさらである。時計を外して数日間、動かさずにおいた場合は、いずれにしてもムーンフェイズを修正しなければならないのだ。ムーンフェイズ表示は、専用の工具、あるいは先の尖った硬くないもので左側のケースサイドにある修正ボタンを押すと、修正することができる。