同じ高さになるように重ねられた2枚の
ディスクによるビッグデイト表示は、日付合わせが快適だ。
(右)SSモデル。ややドーム型のサファイアガラス(両面無反射コーティング)、4カ所ネジ留めされたサファイアガラス製トランスパレントバック、50m防水。(左)18Kローズゴールドのケースを備えたキャプテン グランデイト ムーンフェイズの貴金属モデル。
品質の高い構成部品
これまで述べてきたように、キャプテン グランデイト ムーンフェイズの購入者は、ふたつの付加機能を備えたドレスウォッチを手にすることができる。ところで、そのクォリティはどうだろうか? シルバー文字盤にはギョーシェや模様彫りが施されており、インデックスと針もよく調和している。このクラシカルな文字盤は、直径40mmのスリーピース構造のステンレススティールケースとよく似合う。厚さ11mmのエレガントなケースは、ケースバックの中央に向かって傾斜を持たせることにより、着用すると実際よりも薄く見えるように工夫されている。ややドーム型の風防は、ベゼルから隆起している様子が側面からも観察できる。ラグは、ケースサイドへの取り付け部がベゼルの外周に融け込み、上面にサテン仕上げが施されていることで好感度が高い。ラグの上面以外は、ケースは隅々までポリッシュ仕上げが施されている。だが、そのために指紋が目立ちやすいのは残念だ。
サファイアガラスのトランスパレントバックからは、名高いエリート・シリーズに属するマニュファクチュールキャリバー691を鑑賞することができる。機能的な自動巻きキャリバーは、ボールベアリングで保持された両方向巻き上げ式ローターと調整ネジによる緩急調整機構を備え、50時間以上のパワーリザーブを生み出す。テンプの振動数は、今日では一般的な4Hz、言い換えると2万8800振動/時である。構造についてあえてあら探しをするならば、テンプが自由振動ではなく、ヒゲゼンマイの有効長によって歩度を調整するシステムが採用されている点だろう。また、ローターの生み出すエネルギーを香箱に伝える伝達車は下側だけで支持されており、上側が固定されていない。あくまでも理論の上での話だが、この解決方法は完璧ではない。とは言え、これは伝説的なゼニスの自社製クロノグラフキャリバー、エル・プリメロにも採用されている構造で、現在のエル・プリメロが十分な耐久性を備えていることは言うまでもない。このほか、ストップセコンド機能を搭載し、正確に時刻を合わせられる点においては、エリートのほうがエル・プリメロに勝ると言えるだろう。
エリートは精度も良好である。少なくとも、今回のテストウォッチに関しては、かなり優秀な精度を観察することができた。電子歩度測定機でテストした結果、計算上の平均日差はプラス3秒/日と、わずかなプラス傾向で、5秒という最大姿勢差も大きすぎるほどではない。さらに、着用テストでは、日差がまったく確認されなかった。
ムーブメントには丁寧な模様彫りが施されており、トランスパレントバックから見える部分は言うに及ばず、見えない場所にある数多くの部品もきちんと装飾されている。だが、ブリッジのいくつかに見られる面取りは、手作業で施された面取りとポリッシュ仕上げのクォリティには及ばない。そのムーブメント装飾の中でも重要な役割を演じているのがローターである。ローターは大きく切り抜かれ、中央部には黒でペイントされたゼニスの星が配されている。
ゼニスの星は文字盤にも見つけることができ、最近ではバックルにも配されるようになった。バックルの星には“Z"の文字が刻印されているが、厳しい見方をすれば、これはロゴの“変造"とも言えるだろう。それはそうと、バックルはこの時計の完成度の高さにそぐわない唯一の構成部品である。無垢材から削り出し加工されてはいるものの、デザインは個性に欠け、スティール製のツク棒は曲げ加工されている。一方、汗に強いラバーで裏打ちされたアリゲーターストラップは仕上がりが素晴らしい。手縫いのアリゲーターストラップは裁断面のコバ塗りも完璧で、革は全体的に接着されている。