【83点】IWC/ポルトギーゼ ヨット・クラブ・クロノグラフ

2011.05.03

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ヨット・クラブにはフライバック機能が搭載されている。
クロノグラフの作動中に、停止、リセットという過程を経ずに、
直ちに新たな測定を再開することができる。

ヨット・クラブのバリエーション。左から、シルバーホワイト文字盤のSSモデル、18Kレッドゴールドモデル。

プッシュボタンとリュウズガードは、ヨットを港に係留する係船柱を想起させる

IWCは、このキャリバーのために、同社独自のペラトン自動巻き機構をベースとした新型の自動巻きダブル・ラチェット機構を開発した。巻き上げ用の大小ふたつのコハゼが2対装備されており、合計4個の爪が“押す"と“引く"という動作を交互に行って主ゼンマイを巻き上げる。2対のコハゼは、ハートカムで制御されるのではなく、自動車のエンジンに例えると、クランクシャフトのような原理で作動し、ローターの動きが小さくても十分な巻き上げ効率を得られるように配置されている。巻き上げ効率が従来よりも約30%向上した結果、ローターを軽量化でき、摩耗を軽減することが可能になった。パワーリザーブは約68時間と、十分な長さが確保されている。

このほか、IWCの歴史に依拠した特筆すべき点は、衝撃を吸収する曲がりくねった形状のローターブリッジで、ローターが支えられていることだ。ローターブリッジの形状はコンピューターで正確に算出され、キャリバー89360ではより最適化されている。緩急針ではなく、テンワに取り付けられた微調整ネジで行われる緩急調整は、高級機たる証である。このキャリバーのハイライトは何と言っても、コラムホイールでエレガントに制御されるクロノグラフ機構だろう。
フライバック機能が搭載されていることから、クロノグラフの作動中でも、リセットボタンを押せば針が瞬時にゼロに戻り、直ちに新たな測定を再開することができる。高い技術力を必要とするこの付加機構は、通常であればモデルネームに現れるものだが、IWCはこの点で、自らの功績を過小評価したのだろう。モデル名にこの機能を謳うことを避けている。また、ミニッツカウンターは、クロノグラフを作動させている限りジャンプせず、常に計測を続けるように設計されている。

精度もなかなか優秀である。ヨット・クラブのテストウォッチは、着用テストでマイナス1秒/日という精度を見せた。歩度測定機によるテストでも同じような結果を得ることができ、全姿勢の計算上の平均日差は、クロノグラフ停止時ではマイナス0・8秒/日、作動時ではマイナス0・3秒/日だった。クロノグラフの停止・作動にかかわらず、最大姿勢差は4秒であった。ただ、クロノグラフ作動時の振り角が垂直姿勢で210度まで落ちるのは、少し低すぎる感がある。