ノモスはワールドタイム機構に必要な部品をすべて内製できるようになった。
長いきずな。コードバンは耐久性は高いが、裏側の模様には慣れが必要。尾錠には“NOMOS”のブランド名が刻印されている。
グラスヒュッテから世界へ
チューリッヒ・ワールドタイムは、旅行する機会の多いユーザーにふさわしい、機能的なタイムゾーン表示を備えた素晴らしい時計である。遊び心にあふ れたデザインについては、他のノモス・ウォッチよりも賛否が両極に分かれるところだが、見事な仕上がりであることは間違いない。視認性にやや難があり、 ディテールにわずかなマイナスポイントがあるものの、操作性は完璧で装着感は良好だ。ハイライトは何と言っても、美しく極めて精度の高い自社製ムーブメン トである。ノモスの高い内製率を考慮すれば、価格にも納得できるだろう。いまだにドイツ市場を最も重視するブランドを、チューリッヒ・ワールドタイムの ユーザーが、ドイツ国外でも有名にしてくれるとノモスが期待するのは、必ずしも道理にかなわないことではないのだ。
量産前検査
現在、新型キャリバーξを搭載したふたつのモデルで、大規模な量産前検査が行われている。チューリッヒ・ワールドタイムには2種類、また、タンゴマット GMTには4種類のバリエーションが用意され、機構に改善の余地がないか観察するために、それぞれ150本の時計がノモス直営店からモニター役の顧客に渡 された。機能的な検証を行うだけではなく、どのバリエーションを量産モデルにするか決定するのも、この量産前検査の目的である。モニターは3カ月間、時計 を着用する。その後で、すべての時計がグラスヒュッテのノモス本社に戻され、分解される。摩耗を調査し、メンテナンスを行うためである。この時、モニター の感想も評価される。モニターは、時計を返却して料金の払い戻しを受けたいか、あるいは保証期間が延長されるならばこの時計を手放さずに持っていたいか、 決断するのだ。これらの調査結果をもとに、2011年のバーゼルワールドを目指し、チューリッヒ・ワールドタイムとタンゴマットGMTからひとつずつのバ リエーションが選ばれ、量産されることになる。チューリッヒ・ワールドタイムの第2のバリエーションはワールドタイムSと名付けられ、それぞれの都市名の 隣に夏時間を示すグレーの太陽を備えている。アワーインデックスは黒く、ホームタイムの矢印と文字はグレーで記されている。加えて、ホームタイム用のディ スクでは奇数時が省略されている。チューリッヒ・ワールドタイムの量産モデルには、ワールドタイムSのディテールも盛り込まれるかも知れない。ノモスが市 場導入前に、新型キャリバーを搭載した時計をこうした方法で検査するのは、すでに5度目になる。
技術仕様
ノモス/チューリッヒ・ワールドタイム
製造者: | ノモス・グラスヒュッテ |
モデル: | チューリッヒ・ワールドタイム |
機能: | 時、分、秒(ストップセコンド仕様)、ワールドタイム機能 |
ムーブメント: | キャリバーξ(クシー)、自動巻き、2万1600振動/時、26石、トリオビス緩急調整装置、耐震軸受(インカブロック使用)、グリュシデュール製テンワ、パワーリザーブ約42時間、直径31mm、厚さ5.7mm |
ケース: | SS製、サファイアクリスタル製の風防ガラス(無反射コーティング)、6カ所ネジ留めされたサファイアクリスタルのトランスパレントバック、3気圧防水 |
ストラップとバックル: | シェルコードバンストラップおよびSS製尾錠 |
サイズ: | 直径39.9mm、厚さ10.9mm、総重量73.5g |
バリエーション: | ワールドタイムS |
価格: | 3400ユーロ(日本価格未定、発売時期未定) |
*価格は記事掲載時のものです。記事はクロノス ドイツ版の翻訳記事です。
精度安定試験 (日差 秒/日、振り角)
文字盤上 | +1 | |
文字盤下 | +5 | |
3時上 | +2 | |
3時下 | +2 | |
3時左 | 0 | |
3時右 | +5 | |
最大姿勢差: | 5 | |
平均日差: | +2.5 | |
平均振り角: | ||
水平姿勢 | 302° | |
垂直姿勢 | 267° |
評価
ストラップとバックル(最大10pt.) | 9pt. |
操作性(5pt.) | 4pt. |
ケース(10pt.) | 9pt. |
デザイン(15pt.) | 14pt. |
視認性(5pt.) | 4pt. |
装着性(10pt.) | 8pt. |
ムーブメント(20pt.) | 16pt. |
精度安定性(10pt.) | 7pt. |
コストパフォーマンス(15pt.) | 11pt. |
合計 | 82pt. |