新型アクアタイマーの特徴はダイバーベゼルだ
アウターベゼルの他の利点としては、4mmと幅広く、数字も大きくできることから、視認性が格段に向上することが挙げられる。同時に、傷に強いサファイアガラスをベゼルに採用した。これによって、過酷な環境下で傷がつきやすく、数字がプリントされたアルミプレートがなくなってしまうという、ダイバーベゼル特有の問題も解消した。サファイアガラス製のベゼルには、蓄光塗料のスーパールミノヴァが内側から6層に塗布され、印字されている。ベゼルの最初の15分は背景が黄色で強調されている。この範囲の分数を暗がりで正確に把握することは難しいが、まだ許容範囲と言えよう。20分以降の数字はこれとは逆に、非常に明るく発光する。全体的に見て、大きなサイズと明確なインデックスの恩恵により、時刻の視認性は良好だ。
精度についても、ポジティブな結果を報告することができる。歩度測定器で行ったテストでは、すべての姿勢で0~5秒/日のプラス傾向が見られた。計算上の平均日差はプラス2.7秒/日で、振り角は力強い。
残念ながら、このモデルには自社製キャリバーが載せられていない。Cal.30110のベースは量産キャリバーのETA2892だが、個体差をなくすため、IWCの社内でいくつもの部品に手が加えられている。とはいえ、エボーシュの時点ですでに信頼性と安定した精度で名高く、堅牢なエンジンである。さらに、ETA2892は非常に薄いため、高い防水性にもかかわらず心地良いフラットなケースを実現することができた。ちなみに、インヂュニア・オートマティックに搭載されているIWCの自社製ムーブメントは7.2mmあり、ETA2892の2倍の厚さである。
ねじ込み式のソリッドバックを開けてみよう。ムーブメントにはペルラージュ仕上げ、円模様彫り、サンブラッシュ仕上げなど、さまざまな装飾を見ることができる。ネジ頭にも丁寧にポリッシュ仕上げが施され、エングレーブされた文字にはゴールドが載せられている。
ムーブメントは、日付早送り調整機能とストップセコンド機能を搭載している。リュウズを引き出すとテンプが止まり、針が停止するので、時刻合わせと日付の設定が容易である。扱いやすいリュウズは、ねじ込んで締めるのも、手前に回しながら緩める動作も楽に行うことができ、ふたつのポジションに引き出すのも簡単だ。ベゼルも楽に回すことができる。
ラバーストラップの仕上がりも好印象である。ありがたいことに、プロトタイプのストラップで見られたワッフル模様は、内側だけについており、汗をかきにくいように配慮されている。しかし、まったく汗をかかずにすむというのは無理なようだ。
尾錠には幅の広いツク棒を備えており、ラバーストラップとの相性が抜群である。尾錠はケースと同様に秀逸な作りで、ポリッシュとサテンのコンビ仕上げが美麗である。一部、鋭い角が当たるのが気になった。ラバーストラップの他に、フォールディングバックルを備えたステンレススティール製ブレスレットも用意されており、ナイロン製ベルクロストラップも今秋以降に入手可能になる。ベルクロストラップは 3万5700円と、決して安価ではないが、分厚いドライスーツの上からでも着用できるのが利点である。