【84点】ブライトリング/ナビタイマー 8 B01 クロノグラフ 43

2018.10.20

搭載されているのはコラムホイール式クロノグラフを有する自社製ムーブメント、キャリバー01。装飾研磨が施されているのが見て取れる。

優れた視認性

 だが視認性の良さは、はっきりと長所に挙げられるだろう。トラッドなナビタイマーにはたくさんの目盛りがあるので、やや見づらいことは否めなかった。その点、ナビタイマー 8は文字盤がすっきりと整理され、針もより長く幅広になっているので、素早く時刻を読み取れる。クロノグラフ秒針も先端まで白くしてあるのでコントラストが強く、認識しやすい。数字やインデックス、時分針に入れられた蓄光塗料もくっきり明るく見え、昼夜を問わず時刻を判別できる。

 このモデルはクロノグラフ以外にもタイムスパンを計測できるようにもなっている。ベゼルには古いタイプのパイロットウォッチと同じように三角マークが付いているので、そこを計測開始時に分針の指す位置に合わせておけば、どれだけ時間が経過したか把握できるというわけだ。

 ケースはポリッシュとサテンの磨きを組み合わせている。〝プロフェッショナルⅢ〟と名付けられたブレスレットは、コマのサイズが左右非対称のためダイナミックな印象だ。爽やかな仕上がりで、腕にとてもよくなじみ、コマとコマの間が適度に保たれているので毛が巻き込まれることもない。もっとも、セーフティーボタン付きのフォールディングバックルは、この価格帯としてはいささか簡素な出来に思える。というのも、パーツが型押しで作られていて重厚感に欠けているからだ。とはいえ、磨きはポリッシュとサテンを組み合わせていて、ブレスレットやケースと調和している。

 この新たなデザインは、好みが分かれるところだろう。筋金入りのブライトリング愛好者は、今までのナビタイマーからかけ離れていると、頭ごなしにこき下ろすかもしれない。しかし手に取ってみると、このデザインはよく出来ていると納得させられるものがある。ツールとして役立つアイテムを使いたい場合は、回転計算尺を備えた従来のタイプを選べばよいので、そこは選択肢が増えたと捉えたい。

装飾入りの自社キャリバー

 ケースを裏返してみると、サファイアクリスタル越しに自社開発ムーブメント、キャリバー01の姿が現れる。ムーブメントはクロノグラフのメカニズムも見え隠れするような、きれいに整った構造だ。装飾にも手間を惜しんでいない。サンレイやコート・ド・ジュネーブを施し、ネジ頭は鏡面に磨き、ブリッジ類の縁も面取りした上で磨き上げている。それに対して地板は装飾研磨がなく、レバーやバネが打ち抜きなのは、コストを考慮してのことだろう。だがクロノグラフの制御には、見栄えのよいコラムホイールを採用している。この伝統的で手の込んだ制御方式を選択している場合、プッシャーの感触は重くないものが多い。しかしこのモデルは、クロノグラフのスタート時に関してはスムーズとは言い難い。押す時に結構力が要るのだ。これはクロノグラフが誤って作動するのを防ぐためである。対して、ストップとリセットを掛けるときは、ボタンの押し心地が大分軽やかに感じる。

 この他にムーブメントの特徴として、ガンギ車の上に油の乾燥を防ぐためのふた石が被せられていることが挙げられる。緩急調整は緩急針(インデックス)を動かすスタイルだ。見えないところでは、クロノグラフのオン/オフの切り替えがモダンな垂直クラッチになっているのも特徴的で、この方式だとクロノグラフのスタート時に一瞬針がぶれることはない。また、日付表示は瞬時に切り替わるので、真夜中にディスクが中途半端な位置に来ることがない。しかも通常は文字盤上で深夜の時間帯はカレンダーの修正が禁忌とされているが、このムーブメントはメカニズムに影響を及ぼすことなく行えるようになっている。

歩度の結果も上々

 ブライトリングでは、搭載するムーブメントのすべてがスイス公認クロノメーター検査協会(C.O.S.C.)の認定を取得している。テストモデルも歩度測定器に掛けると、それに見合った数値が出た。3時右のポジションについてはクロノメーター試験では測定されないのだが、クロノスドイツ版のテストでは測定していて、このポジションだけ少々遅れが見られた。他のポジションでは日差はプラス1秒/日からプラス5秒/日の間に収まっている。平均日差はプラス2.3秒と、進みの出方もごくわずかなのは喜ばしい限り。クロノグラフの作動時も、振り角落ちはよくある程度だった。精度はなかなか高い水準にあると言える。

 うれしいことに、このナビタイマー 8にはさらに重要なキーポイントがある。それはパワーリザーブが長いということだ。ゼンマイがフルに巻き上がった状態から約70時間動いてくれる。つまり金曜日の夜に腕から外して置いたままにしていても、月曜日の朝には新たに巻き上げる必要がなく、そのまま着けられるのだ。

 ところで価格についてはどうだろうか? テストに取り上げたモデルは86万円。ブレスレットではなくクロコストラップのものならば83万円だ。回転計算尺を持つクラシックなナビタイマーよりぐっと抑えた価格になっている。このモデルは計算尺もインナーベゼルもないが、従来のものより部分的にはバージョンアップされているのも事実だ。防水性は3気圧ではなく10気圧になっている。これはリュウズがねじ込み式に替わったことによるところが大きい。価格はブライトリングほかのクロノグラフの価格帯と大体同じくらいだ。

 ナビタイマー 8 B01 クロノグラフ 43が果たして真にナビタイマーと認められるのかということについては、その名称が論争の種になるだろう。しかし大事なのは、クロノグラフとして説得力があるか否かということではないだろうか。これに関してはタフに作られた自社製ムーブメントで、精度も優秀というところで加点される。視認性や操作性、装着感についてもポジティブな評価のみだ。細かい点においては気になるところもあるが、仕上がりはおおむね上質感がある。価格とデザインの釣り合いの良さが、すべてを飲み込んでまとめてくれているのだ。