ボール ウォッチ 高性能スティール「904L」の魅力

2022.09.01

腕時計に用いられるものに限っても、数多くの種類が存在するステンレススティール。
その中でも高い耐食性と白い色味で時計愛好家を魅了するのが904Lスティールだ。ボール ウォッチでは同素材を2019年より採用する。

吉江正倫:写真 Photographs by Masanori Yoshie
細田雄人(クロノス日本版):文 Text by Yuto Hosoda(Chronos Japan)

実用素材に与えられた白光の輝き

 実用時計に欠かせないのが、ステンレススティールという素材である。18Kゴールドと比べて傷つきにくく軽量で、チタンよりも加工が容易。セラミックスやカーボンといった非金属系素材では不可能な再研磨も可能とあれば、長らく、腕時計のケース素材として重宝され続けてきたのも納得だ。

 とはいえ、一概にステンレススティールと言っても、その種類は膨大にある。腕時計で使用されるものに限ってみても304Lや医療用スティールと呼ばれる316L、さらにはブランド独自の組成を持つスティールまでさまざまなバリエーションが存在するのだから、いかに同素材が腕時計にとって身近な存在か分かるだろう。

 そんなステンレススティールを外装素材として評価する際に軸となるのが、〝耐久性〞と〝審美性〞だ。前者は海水や汗などによる腐食への耐性、後者は素材の発色を指す場合が多い。そして、この両者を高い次元で両立している素材こそ、ボール ウォッチが2019年より一部モデルで採用する904Lスティールだ。

マーベライト クロノメーター & オハイオ クロノメーター

「マーベライト クロノメーター」と「オハイオ クロノメーター」の2本にも使用される904Lスティールは、優れた耐食性を持つ316Lと同様の組成にニッケルとモリブデン、銅の含有量を高めることで腐食に対してさらなる耐性を得ることに成功している。また、クロムを多く含むため、磨くと白く輝くのが特徴だ。加えて硬度が高く、引っ張りに対しても強い、と、まさに腕時計の外装として理想的な素材なのだが、この引っ張りへの耐久性は同時に加工が難しいことの裏返しでもある。結果、904Lスティールを採用するのは、ロレックスやジラール・ペルゴ、ジン、NAOYA HIDA &CO. など、外装に定評のある少数のブランドに限られる。

マーベライト クロノメーター

マーベライト クロノメーター
刷新された定番モデル。一見従来に同じだが、使用されるSSが316Lから904Lに変更されたうえ、クロノメーター認定を取得するなどの改良が施された。右下の2次元コードから購入可能。自動巻き(Cal.RR1103-C)。25石または26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。SS(直径40mm、厚さ13.2mm)。100m防水。28万6000円。

 では、このことに留意して実際にマーベライト クロノメーターとオハイオ クロノメーターの外装を見ていこう。両モデルの外装は完全に設計が共通しており、いずれもケース、ベゼル、裏蓋、ブレスレットなど、すべてが904Lで製造されている。気になる色味はケースのポリッシュ面を見れば一目瞭然だ。白く輝く様は一般的なステンレススティールケースとは一線を画した仕上がりで、28万6000円という価格からは想像できない高級感を醸し出している。加えて904Lは硬度が高く傷がつきにくいため、この輝きが長く続くのである。8万A/mの耐磁性能と5000Gs(※)の耐衝撃性、そしてC.O.S.C.のクロノメーター認定ムーブメントという毎日の着用を想定した実用時計のキャラクターを考えると、耐傷性の高さを高級感ある色味以上に魅力的に感じる人も多いことだろう。

オハイオ クロノメーター
マーベライト クロノメーターと外装を共有する姉妹機で、よりクラシカルな文字盤デザインを採用。マイクロガスライトはインデックス外周のミニッツスケールに5分刻みで配される。自動巻き(Cal.RR1103-C)。25石または26石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約38時間。SS(直径40mm、厚さ13.2mm)。100m防水。28万6000円。

 ブレスレットはシンプルながら、ボール ウォッチらしい堅牢な作りが光る。特筆すべきはコマ調整の方式で、前述の通り加工が困難な素材ながらもネジ留め式を採用している点に、実用性を追求する同社のブランド哲学が見て取れる。

 白光の輝きを放つ、魅惑の高性能スティール904L。マーベライト クロノメーターとオハイオ クロノメーターの2本は同素材を外装に用いることで、質実剛健なイメージが強くなりがちなボールウォッチの実用時計に、新しい個性を吹き込んだのである。そのうえ、製造コストは増えているはずだが、戦略的な価格は変わらず維持している。気兼ねなくデイリーユースに使用できる、リーズナブルで高品質、かつ高級感のある外装を持つ腕時計が欲しい。そんなわがままをかなえてくれるのがこの2モデルだ。


2022年夏のイチオシの4モデル

マーベライト クロノメーター(28万6000円)

どんなシチュエーションでも使える万能時計が欲しい人に最適な1本

「マーべライト クロノメーター」は3針+デイト表示のシンプルな構成が魅力のツールウォッチだ。極太のバーインデックスと3針に自発光素材であるマイクロ・ガスライトを施すことで、暗所だけでなく強い光源下においても高い視認性を確保する。100mの防水性能と8万A/mの高耐磁性能という高スペックと合わさり、どんなシチュエーションでも安心して着用できる。

 ツールウォッチ然としたマーべライト クロノメーターだが、そんなキャラクターに反して文字盤カラーが豊富な点も見逃せないポイントのひとつだ。インデックスや針とのコントラストによって特に高い視認性を発揮するツールウォッチの定番ブラックはもちろん、そのほかにもトレンドカラーのグリーンやアイスブルー、深みのあるレッドや落ち着いたブルーなど計5色を展開する。

 特に明るいアイスブルーは高耐食かつ、貴金属のように白い色味を持つ904Lスティールのケースとベストマッチ。今年の一押しのモデルだ。

【公式サイトで見る】
https://www.ballwatch.co.jp/item/marvelight-chronometer-blue/


オハイオ クロノメーター (28万6000円)

アンティークウォッチを日常使いしたいと考えている人にベストな1本

「オハイオ クロノメーター」はマーべライト クロノメーターをベースにダイアルを変更したモデルだ。アラビア数字インデックスとトライアングルインデックスを細身に作ることで、1950年代の腕時計を彷彿とさせるクラシカルなデザインを手にした。

 マッシブなデザインが多いボール ウォッチの中では異質な存在だが、ベースがオハイオ クロノメーターのため、もちろんスペックは十二分。

【公式サイトで見る】
https://www.ballwatch.co.jp/item/nm9026c-s5cj-sl/


トレインマスター セコメーター ポケットウォッチ(9万9000円)

名機“ユニタス”を手軽に楽しみたい人向けの現代版鉄道時計

 1920年代の鉄道時計を忠実に復刻した「トレインマスター セコメーター ポケットウォッチ」。6時位置の秒表示をスモールセコンドではなく、回転式のディスクで表示する。鉄道時計にルーツを持つボール ウォッチらしいモデルだ。

 多くの愛好家に“ユニタス”の名称で知られるCal.ETA 6497ベースのCal.BALL RR2102を搭載し、懐中時計としては手頃な45mmサイズを実現している。販路をオンライン販売限定に絞ることで税込みでアンダー10万円を実現。一般的なユニタス搭載機の販売価格を考えると戦略的なプライスだ。ケースバックには25文字まで刻印が可能。オンライン限定モデル。

【公式サイトで見る】
https://www.ballwatch.co.jp/item/pw1098e-wh/


ネドゥ G5(57万2000円)

ダイバーだけではなく、とにかくハイスペックな時計を着用したい人にお勧めな1本

 600mの防水性能とヘリウムエスケープバルブを持つ、飽和潜水対応ダイバーズウォッチ「ネドゥ G5」。プロフェッショナル向けの、まさに潜水ツールといったスペックを持つため、ケース径44mm、厚さ17.3mmとビッグサイズだ。しかし、軽量なグレード5チタン製のため、重さはブレスレット込みで209gに抑えられている。

 加えてチタン製ブレスレットにはエクステンションシステムが備わるため、日によって異なる手首の微妙な太さの変化に対応可能。手首にピッタリと装着された時計は、総重量209gとは思えないほどに軽快だ。

【公式サイトで見る】
https://www.ballwatch.co.jp/item/nedu-3/



Contact info: ボール ウォッチ・ジャパン TEL:03-3221-7807