「ロイヤル オーク オフショア」以来、オーデマ ピゲが26年ぶりに発表したまったく新しいコレクションが「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ」である。瞬く間に、新旧時計愛好家を虜にしたその唯一無二のクリエーションの秘密を、数々のキーワードからひもとく。
新コレクション「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ」の開発は、2012年にオーデマ ピゲ暫定CEO(当時)に就任したフランソワ-アンリ・ベナミアスが、Cal.3120に代わる次世代の基幹キャリバーを開発し、それを搭載することを目指して手掛けた肝いりのプロジェクトであった。これは2020年に登場したスモークブルーラッカーダイアルにホワイトゴールドを組み合わせた2021年発表モデル。自動巻き(Cal.4302)。32石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。18KWG(直径41.0mm、厚さ10.7mm)。30m防水。407万円(税込み)。
鈴木幸也(クロノス日本版):文 Text by Yukiya Suzuk(i Chronos Japan)
CODE 11.59 by AUDEMARS PIGUET
開発期間約5年を経て2019年に誕生したのが、オーデマ ピゲのまったく新しいコレクション「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ」(以下CODE 11.59)である。SIHH2019発表時は、同社が四半世紀ぶりに発表したコレクションとして大いに注目を集めると同時に、そのあまりにも斬新なデザインを巡って、多くの時計関係者の間で賛否両論を巻き起こしたことは記憶に新しい。
当時、すでに時計業界において揺るぎない地位を築き、大きな成功を収めていたオーデマ ピゲであったが、そこにとどまることなく、同社の未来を切り拓く新たな旗艦コレクションとして開発されたのが、このCODE 11.59であることは、そのコレクション名そのものが物語っている。
「Challenge=挑戦」「Own=継承」「Dare=追求」「Evolve=進化」という4つのキーコンセプトの頭文字を連ねた「CODE」という文字列に、新たな日付に切り替わる直前である11時59分(23時59分)から採った「11.59」という数列を組み合わせた、一見、暗号めいたコレクション名には、1875年の創業以来、受け継いできた伝統と技術力を継承し、常にその進化を追求するために、たゆまぬ挑戦を続けてきたオーデマ ピゲという老舗メゾンの哲学そのものを、まったく新しい次元へと昇華し、希望に溢れた明日へと導く――。CODE 11.59とは、まさにその扉を開こうとする、日付が切り替わるその直前、いやその瞬間にいることを意味しているのだ。
したがって、当初、賛否相半ばしたそのデザインも、進化への挑戦そのものだ。円形と八角形を組み合わせたベゼルとケースは、正面から見るとラウンドシェイプだが、円形のベゼルと裏蓋に挟まれたミドルケースは八角形である。そのベゼルと裏蓋は、側面が大きくスケルトナイズされたラグによって一体化されているため、見る角度によって異なる造形を描き出し、さまざまな表情と陰影をケースとラグに与える効果を生んでいる。
加えて、ベゼル、ミドルケース、裏蓋という3つのパーツには、それぞれ繊細なヘアラインと、歪みの一切ない鏡面が組み合わせられ、完璧なまでに仕上げられている。このヘアラインとポリッシュ仕上げのコンビネーションは、1972年に誕生したアイコンモデル、ロイヤル オークの八角形ベゼルとメタルブレスレットの細部に施され、その進化とともに培われてきたオーデマ ピゲが擁する熟練のクラフツマンが誇るサヴォアフェール(ノウハウ)のひとつである。
CODE 11.59に立体感を生んでいるのは、ケースとラグの造形ばかりではない。ベゼルを可能な限り絞ることで大きく取った文字盤全体を覆うサファイアクリスタル風防。CODE 11.59においては、この風防もただの風防ではない。サファイアクリスタルの表面と裏面で曲面率を変えたダブルカーブ風防を採用しているのだ。表側には、12時から6時方向にかけてカーブを描く2次曲面、裏側には球面状の3次曲面が与えられている。結果、サファイアクリスタル風防は2次元と3次元が折り重なった複雑な造形を持ち、斜めから見た際に奥行きを感じさせるレンズ効果を生む。
文字盤を見ると、12時下にくっきりと浮かび上がるのが、24Kゴールド製ガルバニック加工一体成形ブランドロゴである。このブランドロゴに加え、大きく、個性的な書体のアラビックインデックス、そしてそれ以外のバーインデックスは、斜めから見るとケースとラグ同様、その立体感が際立つ。これらはいずれもガルバニックによる厚盛り加工で成形された正真正銘の24Kゴールド製である。したがって、ただ立体的であるだけでなく、同時にゴールドの輝きによって、文字盤上の審美性と視認性に貢献しているのだ。
CODE 11.59は、搭載するムーブメントも注目に値する。ケース径41mmで統一されたCODE 11.59には、発表当初からふたつの最新キャリバーが搭載されている。ひとつが3針自動巻きのキャリバー4302、もうひとつがフライバック付き自動巻きクロノグラフのキャリバー4401である。いずれも現代の基幹ムーブメントにふさわしく、実用性十分なパワーリザーブ約70時間を備える。2003年登場の自社開発キャリバー3120以来、16年ぶりに発表された新型基幹キャリバーを搭載することからも、このCODE 11.59に託された“未来”の重みを感じ取れるだろう。
2019年初出。2003年以降使用してきた既存の基幹キャリバー3120に代わる新世代の基幹キャリバー。パワーリザーブは約70時間に延長され、実用機として十分な性能を備えると同時に、高級機仕様の優れた仕上げを持つ。主ゼンマイのトルクを高めることで、大きなサイズのフリースプラングテンプの採用が可能になった。ムーブメント直径32.0mm、厚さ4.90mm。部品数257点。
2019年初出。量産ムーブメントとしては、オーデマ ピゲ初となる自社開発による一体型クロノグラフムーブメント。時・分・秒積算のハートカムをそれぞれ正確にリセットできるように、分割されたリセットハンマーを採用する。さらにフライバック機構も搭載。ムーブメント直径32.0mm、厚さ6.90 mm。部品数381点。
2019年の発表後、CODE 11.59は「色・素材のバリエーション」という方針の下、ゴールドに加え、ミドルケースの素材にセラミックスを採り入れ、文字盤にも多様なカラーリングとグラデーション、新たな表現を盛り込むことで、そのファミリーを着々と広げ、現在もその誘引力を拡張し続けているのだ。
拡張する「CODE 11.59」ファミリー
2019年に誕生した「CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ」は、短期間のうちに、ダイアルカラーとケース素材のバリエーションを増やし、さらに種々の複雑機構搭載モデルも拡充するなど、そのファミリーはますますの発展を見せる。
(上)半透明なラッカーを用いたスモークパープルラッカーダイアルモデル。自動巻き(Cal.4302)。32石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。18KPG(直径41.0mm、厚さ10.7mm)。30m防水。407万円。(下)スモークバーガンディラッカーダイアルモデル。いずれも文字盤外周に向かって濃くなるグラデーションが美麗。自動巻き(Cal.4302)。32石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。18KWG(直径41.0 mm、厚さ10.7mm)。30m防水。407万円(税込み)。
(右)CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ クロノグラフ
ミドルケースにブラックセラミックスを採用したバイカラーケース。セラミックケースの製造は新たにパートナーシップを締結したスイスのファミリー企業、バンゲーター社が担う。文字盤は縦筋目仕上げを施したスモークグレー。文字盤外周に向かって濃いラッカーを吹くことで、グラデーションを与えている。自動巻き(Cal.4401)。40石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。18KPG×ブラックセラミックス(直径41.0mm、厚さ12.6mm)。30m防水。610万5000円(税込み)。
10時から2時位置にかけて弧を描く分目盛りのスケールの上を3つのスターホイールがアワー(時)を表示しつつ、分も指し示す、17世紀に生まれた「ヴァガボンドアワー」ディスプレイを搭載。1991年にオーデマ ピゲが「スターホイール」コレクションとして復活させ、今回新たに「CODE11.59 バイ オーデマ ピゲ」コレクションに加わった。自動巻き(Cal.4310)。32石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約70時間。18KWG×ブラックセラミックス(直径41.0mm、厚さ10.7mm)。30m防水。687万5000円(税込み)。
※表示価格は掲載時のものとなります。
高級時計激戦区・名古屋の殿堂
「オーデマ ピゲ ブティック 名古屋」が愛知県名古屋市中心部の栄地区に誕生したのは2020年5月のこと。今や名古屋中心部のランドマークとしてすっかり定着したようだ。国内最大規模の売り場面積には圧倒されるが、その広いブティック内は、オーデマ ピゲのコレクションがディスプレイされる「マニュファクチュール」コーナー、同メゾンの社会貢献事業などを学ぶことができる「ラウンジ」、「バーラウンジ」など、用途に応じてゾーニングされているため、どこにいても居心地よく過ごすことができる。
加えて、オーデマ ピゲ ブティック 名古屋独自のサービスである「バレーパーキングサービス」を利用すれば、車で来店した際、スタッフにキーを渡すだけで車を預けることができ、そのままエントランスへ向かうだけという便利さだ。事前に電話予約を入れておけば、誰でも受けられるこのサービスも最上のおもてなしのひとつだ。
オーデマ ピゲ ブティック 名古屋
住所/〒460-0008 愛知県名古屋市中区栄3-17-16
電話番号/052-211-8188
営業時間/11:30-19:30
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