ウォッチ情熱応援団の団長が選ぶ2024年の新作時計ベスト5「1~5位まで全部ポルトギーゼでいいんじゃないかと思った」

FEATURE2024年新作時計
2024.04.23

ジャーナリストをはじめ、時計業界の著名人たちに2024年に発表された時計からベスト5を選んでもらう企画。今回は人気時計系YouTubeチャンネル「ウォッチ情熱応援団」の団長が登場。2024年をIWCの“ポルトギーゼイヤー”と称した団長が選んだのは、実用性に優れた時計たちだった。



1位:IWC「ポルトギーゼ・オートマティック 42」Ref. IW501705

 昨年はインヂュニアのリニューアルで注目を集めたIWCが、今年もやってくれました! 今年はポルトギーゼ祭りでしたね。

 モデル単位でのリニューアルではなく、シリーズ丸っと、しかも文字盤カラーによるカテゴリー分けという、とっても楽しい仕掛けもよかった。どの色がいいかな?って、無意識に買うつもりで見てしまいました。危ない。笑

 幾重にも重ねられたラッカーは、まるでエナメルのようなツヤ感。空をテーマにした4色のうち、個人的な好みは「沈みゆく太陽の黄金の光に包まれる夕暮れ時」を表現した「デューン」です。

IWC ポルトギーゼ・オートマティック 42

IWC「ポルトギーゼ・オートマティック 42」Ref.IW501705
自動巻き(Cal.52011)。31石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約7日間。SSケース(直径42.4mm、厚さ13mm)。5気圧防水。187万円(税込み)。


2位:H.モーザー「ストリームライナー・トゥールビヨン スケルトン」

 2022年の「パイオニア・シリンドリカル トゥールビヨン スケルトン」から約2年。ストリームライナーにもスケルトン仕様が登場。パイオニアの時も衝撃的でしたが、今回も凄まじいスケルトンの作り込みにため息です。

 スケルトンって、そのブランドの美学が分かりやすく表現されるものだと思うのです。地板、輪列受け、ブリッジ、歯車、ローターなどなど、どんな風にデザインして、どこまで仕上げを施すのか。

 H.モーザーの公式サイトには「典型的なミニマルスタイルを実現」とあります。そこにかける職人さんたちの粋な思いが、ハッキリと伝わってくるものに仕上がっているのではないでしょうか。コンセプトと実機の仕上がりにズレがない、今年のブランドの顔とも呼べる大傑作。

H.モーザー ストリームライナー トゥールビヨン スケルトン

H.モーザー「ストリームライナー・トゥールビヨン スケルトン」Ref.6814-1200
自動巻き(Cal.HMC 814)。28石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約72時間。SSケース(直径40mm)。12気圧防水。予価1413万5000円(税込み)。


3位:チューダー「ブラックベイ 58 GMT」

 色々な意味で「え?」っとなったのが、チューダー「ブラックベイ 58 GMT」。ロレックスで長年復活を期待され続けている“コーク”のGMTが、まさか兄弟ブランドのチューダーで出てくるとは。

 しかも58シリーズで、かつマスター クロノメーター認定というのも、なかなかにインパクトがありました。価格設定も相変わらず優しくて、ミドルレンジのデイリーウォッチとして、最強クラスの1本が出てきたなというのが素直な感想です。

 58は取り回しの良いサイズ感が魅力で、GMTを搭載しても厚さ13mm以下に収まっているのが素晴らしい。ヴィンテージなカラーリングを真新しく整えてしまうセンスの良さも、さすがチューダー。

ブラックベイ 58 GMT

チューダー「ブラックベイ 58 GMT」Ref.M7939G1A0NRU-0001
自動巻き(Cal.MT5450-U)。2万8800振動/時。パワーリザーブ約65時間。SSケース(直径39mm、厚さ12.8mm)。200m防水。64万3500円(税込み)


4位:ベル&ロス「BR 05 ブラック セラミック」

 待ってたよ!と叫んだファンが多かったであろう、BR 05のブラックセラミック。ハイテクセラミックスの使用は、ラバーベルトやレザーベルトとの組合せで、「BR 01」時代からのお家芸。

 現行モデルではBR 03シリーズで複数展開されていますが、ブレスレット仕様のBR 05では今回が初となります。

 ブランドカラーを纏った、スタイリッシュなアーバンウォッチ。単にセラミックを使用したというだけでなく、ステンレススチールのモデルよりもケース幅を1mm大きくしたり、ブレスレットの中コマをスクエアに近い形状に変えたりと、細部のチューニングが多く行われていることが、非常にベル&ロスらしい(ブルーノ・ベラミッシュらしい)。

BR 05 ブラック セラミック

ベル&ロス「BR 05 ブラック セラミック」
自動巻き(BR-CAL.321)。25石。2万8800振動/時。パワーリザーブ約54時間。ブラックセラミックケース(縦41✕横41mm、厚さ11.2mm)。100m防水。113万3000円(税込み)。


5位:パテック フィリップ「ゴールデン・エリプス Ref.5738/1」

 薄型の名機cal.240搭載の新バリエーションは、なんとチェーンスタイルのブレスレット仕様。363個ものパーツで構成される超複雑なブレスレットは、サイズ調整も可能というから驚きです。

 かっこよすぎ。セクシーすぎ。これ買ったら上がっていいですか?笑

パテック フィリップ 新作 ゴールデン・エリプス 5738/1

パテック フィリップ「ゴールデン・エリプス」Ref.5738/1
自動巻き(Cal.240)。27石。2万1600振動/時。パワーリザーブ約48時間。18KRGケース(縦39.5×横34.5mm)。3気圧防水。906万円(税込み)。


総評

 今年も始まった! と思ったら、あっという間に終わってしまったウォッチズ&ワンダーズ。期間中、見きれないほどの新作が発表され、情報収集したら即動画をアップするという怒涛の日々。心躍る楽しいお祭り期間でした。上記ランキングは、良いもの順ではなく、時系列でビビッと来た順になっております。

 個人的には、IWC「ポルトギーゼ」のリニューアルが非常に印象深かったです。超複雑機構エターナルカレンダーの発表はもちろん、4色でカテゴライズされた作品群はどれも素晴らしかった。最初に実機を見たということもあって、1~5位まで全部ポルトギーゼでいいんじゃないかと思ったくらい。どれも本当に良かったです。

 全体としては、ポルトギーゼやベル&ロス「BR 05」のような正統進化から、レイモンド・ウェイルのミレジムのようなニューカマー、ロレックスの「ロレックス ディープシー」イエローゴールドのような異端まで、非常に幅広く発表された年になったのではないでしょうか。

 各社思い思いの方向に進んでいるため、もはやトレンドという概念はなくなってきているのかもしれませんね。私達もまた、それぞれが思う「好き」を追い求めることが正解になっていくことと思います。



ウォッチ情熱応援団 団長のプロフィール

ウォッチ情熱応援団 団長

腕時計の面白さを伝えるYoutubeチャンネル・ウォッチ情熱応援団のメインMC。モノづくりに憧れ、東証一部の電機メーカーへ研究職として就職。しかしマスプロダクトではなく“手仕事”への興味を自覚したことで職人の世界へ転身。“クラフトマンシップへの賞賛”をテーマに年間およそ300本、これまでに1750本を超える動画を投稿。累計再生回数は5000万回(2024年4月時点)を超える。


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